ヘパリン類似物質ってどんな成分?ドラッグストアで買える?毒性は?
こんにちは、コスメコンシェルジュの伊藤羊子です。
乾燥からくる肌荒れやカサカサの治療などのために、皮膚科でよく処方される「ヘパリン類似物質」というものがあります。
成分名よりも「ヒルドイドローション」「ヒルドイドクリーム(ヒルドイドソフト軟膏)」という名前の方が有名かもしれません。
ヒルドイドローションは白い筒状の容器に入ったピンク色のキャップのローション、ヒルドイドクリーム(ヒルドイドソフト軟膏)はピンク色のチューブに入ったクリームです。
最近はジェネリックのものもあり、ヒルドイドの代わりに「ビーソフテン」などが処方されることもあります。
さて、乾燥が激しくなってくると、すねや肘などに白く粉を吹いてしまうような症状が現れてしまう人も多いのではないでしょうか。
そうした激しい乾燥はかゆみを引き起こし、掻くことで炎症や傷へと症状が悪化し、どんどんお肌のバリア機能が低下してしまうので、早めの対処が重要です。
皮膚科で乾燥対策のために処方されるヘパリン類似物質とは、どんな成分なんでしょうか?
ヘパリン類似物質ってどんな成分?
ヘパリン類似物質は、ヘパリノイド(Heparinoid)という英名を持つ保湿成分です。
ヘパリンによく似た働きをするため、ヘパリン類似物質と呼ばれています。
ではそもそも、ヘパリンって?
ヘパリンとは、人間の体内に存在するムコ多糖類の一種です。
美容成分や健康サプリなどでよく聞くヒアルロン酸をはじめ、コンドロイチンやグルコサミンなどもムコ多糖類の仲間です。
ムコ多糖類は、人間の細胞の周りで、水分をしっかりと蓄える働きをする物質というと分かりやすいでしょうか。
この水分を蓄える働きが肌のうるおいを保持したり、体内の細胞に栄養を届けたり、逆に細胞から出た老廃物を運んだりする働きをしています。
そんなヘパリンに似せて作られたのが「ヘパリン類似物質」です。
主にブタの臓器を原料に作られています。
ヘパリン類似物質のはたらき
ヘパリン類似物質の働きは、主に3つあります。
- 保湿作用
- 血行促進作用
- 抗炎症作用
カサカサ乾燥肌や荒れ性肌、アトピーにヘパリン類似物質配合のヒルドイドが処方されることが多いのは、これらの作用によってお肌にうるおいを与え、血行をよくして肌の再生を促し、炎症を鎮める働きがあるからです。
ヘパリン類似物質配合のローションやクリームはどこで買えるの?
ヘパリン類似物質が配合されたローション・クリームの代表的な存在といえば、最初にも述べたように「ヒルドイド」です。
ヒルドイドローションやヒルドイドソフト軟膏、ヒルドイドクリームは基本的に医師の処方がないと手に入れることはできません。
かかりつけの皮膚科があれば、「乾燥対策にヒルドイドが欲しいんですけど」と言えば処方してもらえます。
注:皮膚科でヒルドイドが処方されるのはあくまでも皮膚疾患の治療目的としてです。 乾燥にいいから、処方してもらえば安いから等、美容目的でヒルドイドを処方してもらうのはNGです。 |
では、医療機関でしか手に入れられないのか、ドラッグストアなどでは買えないのかというと、そうでもありません。
「ヒルドイド」という名前ではありませんが、他メーカーのヘパリン類似物質配合のローションやクリームが1000円~2000円程度で購入することができます。
たとえばノバルティスファーマのHPローションやHPクリームは、皮膚科等で処方されるヒルドイドと同じくヘパリン類似物質を0.3%配合したローション&クリームです。
皮膚科で処方されたヒルドイドの方が保険適用になるぶん安価ではありますが、わざわざ皮膚科に行くのが面倒くさい、かかりつけの皮膚科がないので初診料などで結果的にお金がかかってしまう、という場合はドラッグストアなどで購入するのもひとつの手です。
最近は小林製薬から発売されているヘパリン類似物質配合保湿剤のさいきシリーズがテレビCMでもよく流れていますね。
また、どうしても皮膚科に行くのは面倒くさい、でもヒルドイドがいい、という場合は国外で販売されているヒルドイドを個人輸入で入手する方法もあります。
ヒルドイドフォルテクリーム(HirudoidForteCreame)という名前で販売されているものです。
個人輸入代行サイトなどで購入することができます。
ある販売サイトでは国際書留郵便【香港発送】となっているので香港で売られているヒルドイドクリームのようです。
製造会社名は Medinova Ltd.となっています。
ただし、個人輸入をする場合はあくまでもその使用は自己責任で、ということになりますので注意してください。
敏感肌さんの場合は、思いもかけないトラブルが起こったときのことを考えると、やはり皮膚科で処方してもらうか薬局で販売されているものを購入した方が安心ですから、当サイトではあまり個人輸入はオススメしません。
ヒルドイドを美容目的で処方してもらうということ
ちょっとこの記事の主旨とは外れますが、最近話題になっている「ヒルドイドを美容目的で病院で処方してもらうこと」について、意見を書いておきます。
ネットの美容情報や口コミでは、ヒルドイドを美容クリームとしてスキンケアに使うと、毛穴が消えた!しわが目立たなくなる!等の記事が見かけられます。
ヒルドイド(をはじめとしたヘパリン類似物質配合の保湿剤)は、皮膚科で皮膚疾患のある人に処方されるくらいですので刺激が少なく、保湿力が高いことは確かなのですが、ネットの情報にあるような「数万円の美容液と同じ効果!」という賞賛はちょっと違うのではと思います。
スキンケア化粧品の代わりにヒルロイドを使って劇的に顔の皮膚の調子がよくなった、というのは、それまでのスキンケアがよほど足りないまたは過剰で肌を傷めていた、適切なお手入れができていなかった可能性があります。
つまり、「ヒルドイドが劇的にすごい」のではなく、「これまでのお手入れが肌に合っていなかった」ということを真剣に考えてみた方がよいです。
使ってみたら肌に合っていたから今後はずっとヒルドイドを使い続けよう!というのも、よろしくありません。
ヒルドイドは基本的に、皮膚疾患(おもに乾燥)の治療のために使うものですので、日常のお手入れのために使うものではありません。
ヒルドイドの血行促進作用は血管拡張作用にもつながりますので、特に皮膚が薄い顔に使う場合、発赤(赤みが出ること)が起こる可能性があります。
また、少々肌への影響とは違う側面の問題ですが、病院で美容を目的ヒルドイドを処方してもらうということは、健康保険制度が破綻しかねないというこの時世を考えると、医療費を不当に膨らませることに繋がります。
日常の肌のお手入れには、化粧品を上手に使いましょう。
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ヘパリン類似物質配合の保湿剤、副作用は?ステロイドは入ってる?
ヘパリン類似物質そのものは、人体にもともと存在するものに非常に近い性質の成分ですので、安全性の高い成分です。
長期間使用しても副作用は見られないと言われています。
ただし、ヘパリン類似物質配合の保湿剤に含まれるほかの成分にアレルギー反応を起こすことは充分に考えられるので注意が必要です。
ヘパリン類似物質配合の保湿剤でアレルギーやかぶれが発症する?
ヘパリン類似物質の配合量は0.3%。
ということは、それ以外の99.7%は基材や保湿剤など「ヘパリン類似物質以外の成分でできている」というわけです。
たとえば、ノバルティスファーマのHPクリームに配合されている成分は以下のようになっています。
100g中ヘパリン類似物質0.3g
添加物:トリイソオクタン酸グリセリン、オレフィンオリゴマー、ジメチルポリシロキサン、セトステアリルアルコール、ステアリン酸グリセリン、ステアリン酸ポリオキシル、パラベン、グリセリン、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マクロゴール、D-ソルビトール、エデト酸ナトリウム、エタノール
ヘパリン類似物質ではなく、この保湿クリームの中に含まれているその他の成分(人によってはパラベンであったり、エタノールであったり)に肌が刺激を感じる可能性があることも覚えておきましょう。
また、カサカサ程度の状態であれば問題ないかと思われますが、アトピーなどで皮膚の状態が悪い場合や、長期間使用する場合、部分的ではなく広範囲に使用する場合などは、最初は大丈夫でも途中からかぶれなどの症状が出てしまう可能性もあります。
使用する場合は肌の状態やかゆみや赤みが出ないか注意しながら使う必要があります。
ヘパリン類似物質配合の保湿剤にはステロイドが入っている?
ヘパリン類似物質配合の保湿剤にステロイドが入っていないか心配な人も少なくないと思います。
基本的にヘパリン類似物質配合を表に打ち出している保湿剤にはステロイドは入っていないので安心して継続的に使用できます。
が、今現在はいろいろなメーカーからヘパリン類似物質配合の保湿剤がでているため、すべてのアイテムにステロイドが入っていないとは言い切れません。
ステロイドが入っているかどうか不安な場合は、薬剤師さんなどに相談してから購入しましょう。
ちなみに、皮膚科で処方されるヒルドイドローション、ヒルドイドソフト軟膏やドラッグストアで購入できるノバルティスファーマのHPローション・クリーム、小林製薬さいきローションにはステロイドは配合されていません。
ヘパリン類似物質を使わないほうがいい場合もあります
保湿ができて、血行もよくなって、抗炎症作用もあるヘパリン類似物質。
肌荒れやアトピーには心強い味方ですが、使用を避けたほうが良い場合もあります。
それは、「傷があり、血が出ている場合」です。
ヘパリン類似物質には、血行を良くする働きと同時に「血液が固まるのを防ぐ働き」があります。
そのため、血が出ている部分に使用すると血が固まらずかさぶたになりにくくなってしまいます。
血が出るような傷がある場合はヘパリン類似物質配合の保湿剤は避けて、ワセリンを使用したり、その他の低刺激な保湿剤を利用するなど、別のもので保湿するように心がけましょう。
また、ヘパリン類似物質配合の保湿剤を、目や目の周囲、唇、粘膜などには使用しないこと。正しい使用法を守って、安全に使用してください。
ヘパリン類似物質が肌に合いさえすれば、ずっと使い続けてもいいの?
ヘパリン類似物質配合の保湿剤は、保湿感が高く、医薬品という安心感もあります。
実際、皮膚科でも長期的に処方されることも少なくない保湿剤です。
が、使っているうちに、発疹や赤み、かゆみ等の皮膚の変化や症状に気付いた場合はすぐに使用を止めてください。
また、当サイトでは、「医薬品、医薬部外品」は症状が悪化しているときに一時的に頼るものという考え方をしています。
風邪の予防のために風邪薬を飲み続ける人がいないように、皮膚のケアにおいても、ある程度トラブルがおさまったら、医薬品ではなく一般的な化粧品等でお肌の調子を整えていくことを推奨しています。
ヒルドイドをはじめとしたヘパリン類似物質配合クリーム・ローションは、長期的に使用しても副作用が出にくいものではありますが、医薬部外品に入りますので、基本的には症状がおさまるまでを担当してくれる存在です。
肌が弱っているときは医薬品の力を借りて元に戻し、肌がよくなってきたら通常のスキンケアに切り替えて肌本来の綺麗になろうとする力を引き出すことが、本来の「健康的な肌」になるために大切ではないでしょうか。
お肌の状態をじっくり観察しながら、肌の状態に合わせてケアを変えていくことは美肌のためにとても重要なことです。
自分のお肌と対話をするように、どんなケアを今必要としているのかを考えるクセをつけるとどんどん自分のお肌が、体が、分かるようになってきます。
うるおいを外から補うことも大切ですが、理想的な状態は「自らうるおいを作り出せる肌」です。
肌みずからがうるおいを生み出せるようになることで注目の成分といえば、お米から生まれた「ライスパワーNo.11」です。
ライスパワーNo.11は、「皮膚水分保持能改善」の効果があるとして厚生労働省の認可を受けた有効成分で、ライスパワーNo.11を一定以上の割合で配合された化粧品は医薬部外品(薬用化粧品)として販売されています。
対処療法が必要な場合と、日ごろのケアでお肌の調子を保つ場合と、うまくアイテムを使い分けることは健康なお肌への近道ともいえます。ヘパリン配合クリームやローションは安心かつ効果の高いものではありますが、肌本来のもつ力を引き出して、本当の健やかなお肌を目指していきましょう!